埋めたい  僕は歩いた。  彼女の死体を胸に抱えて。  色んなところを転々とした。  でも、どこにも見当たらなかった。  彼女の死体を。  彼女の死体を。  埋める場所を。  この世とは思えないほど美しい場所がこの世にはない。  おばさんに訊いた。 「何そのコ、死んでるじゃないの。警察は?」  警察なんてどうでもいいんです。  老人に訊いた。 「美しいものなどないわ」  僕もそう思います。  中学生くらいの少年に訊いた。 「彼女」  それはそうかも。でも彼女を彼女に埋めることは出来ない。  幼稚園の女の子に訊いた。 「ビー玉ー」  うんまあね。  そこの保母さんにも訊いた。 「お金ね」  保母さんのイメージ通りだ。    やっぱり誰に訊いてもダメだった。  仕方ないので交番に行った。  探し物は交番に、と親に教えられていたから。  交番の警官はお茶を飲んでいたのに急にざわついて、僕に手錠を掛けた。  そのまま送検された。  彼女は司法解剖され燃やされたそうだ。  そうか。  思えば、一番この世で綺麗なものは、炎かもしれないな。  それは地獄を連想させる。  なんだ、そうか。  僕は嬉しくて取調べ中に泣きじゃくった。  出所して、まず彼女の墓を綺麗にしに行った。  僕は、全力でそこを綺麗にして、手を合わせ、とっておきの線香を供えて 立ち去った。  心には、いつまでも色あせないものがあったんだ。