浮いてた女の子の話  俺はそんなに頭固くない。  幽霊とか、いると言われりゃ否定はしない。UFOとかUMAのたぐいもね。  まあいるんじゃない? 知らねーけど。  たださすがに目の前に人浮かんでるのはビビッた。  たぶん夢じゃない。そりゃあ、6時間目は物理でクソ眠かったが、電車の中でもテトリスやりな がらうつらうつらしてたが……それでもこれは夢じゃねぇって思った。  というか、夢だとしたらヤバいことになる。浮かんでる女の子。ミニのスカート。フツーにパン ツ見えまくり。白すぎ。超好み。間違いなくこれは夢精パターン。  …夢なら。だけどこれは夢じゃねぇ。 「あたしな。たまーに、浮くねん」  女の子は関西から来たって。飛んで。ここまでどんだけ距離あるのか知らないけど、とりあえず ありえないのは理解した。 「医者とか行っても、原因わからんねやけど。ただたまに……こう……ブワーッ、と、脳味噌ガー なるような、感覚がな……」  何言ってっかさっぱりわかんねぇけど、ただスゲー眠そうに見えた。 「…ねむ。堪忍な、あんたの部屋で悪いけど、寝させて、もらう、わ……」  …寝た。  マジで寝やがった。細っそいイビキ。たまに吐息が混じる。  なんつーか、エロい気持になってきた。  むくむくと色々育つ。  寝てるよな? 完璧寝てるよ。うん間違いない。寝てる。  さあ俺、触れ。触れ触れ触れ触れ。戸惑ってんなよ。キスとかは起きるだろうから止めとくにし ても、軽く胸揉むくらいなら大丈夫だって――  ビュウウ、と、窓から風が吹き込んできた。つえー風だ。  女の子は、寝つつもちょっと浮いてたらしい。そして風は女の子を連れて行っちまった。  手を伸ばしたけど、届かなかった。  ほんの10分くらいしか一緒にいなかったのに、多分一生忘れられない。  幽霊とかUFOとかUMAがいるなら、空浮かぶ女の子だってフツーにいるだろ? なんて思っ て、あれからもう5年も待ってる。  あれから、未だに現れてくんねぇけど。でも多分もうちょっと待ってると思う。