ゴミから生まれたので臭いんです。  それは、仕方のないことでしょう。  だって、私は、ゴミで出来ているのですから。  外見は、人伝ですけど、いいほう、だそうです。  ただ、ゴミです。それはもう、面白いくらいに皆逃げていきます。  半径20メーター以内に入れば、もう、本当に皆鼻をつまみますから。  ある日、こんなことがありました。  お昼休みのことですが、職場の皆でご飯を食べに行こう、というお話をしていました。  私だけ、その輪に入れてもらえませんでした。  ――というか、入ろうとなんて思ってもいなかったのですけどね。  ただ、偶然近くにいただけなんです。  それなのに、同性の上司が、私の胸を押したんです。 「あなたは仕事が溜まってるでしょう! お昼休みをずらしなさい」  溜まってなんていません。  だって、だって。  私の職場は、誰も利用しない施設。毎日、仕事が二時間持たないんですから。  暇で暇で仕方なくて、皆おしゃべりしているのに。 「正直に言えばいいじゃないですか! 私の臭いが嫌なら!」  ――こんなこと、言いたいけど、言えません。  夏は特に酷いんです。  夏は、本当に腐りが早くて……  私は毎朝、生ゴミを口から取り入れてから出勤しますが、夜の生ゴミが、朝にはもう悪臭を放っ ているんです。  その方が、おいしいんですけど……臭いは、かなり強くなります。  そう、今、私は最高に悪臭なんです。  それなのに――  抱いてくれる人が、いました。  それは、小さな幼稚園児の男の子。  かわいい……  食べたいくらいに、可愛いんです。  大人だったら間違いなく変態なんでしょうけど、子供がやると、どうしてこう愛らしいのでしょ う。  私の臭いふくらはぎに、どこか熱中した顔付きで体全体を寄せてきてくれます。  こんなに、こんなに臭いのに。  ゴミが、大好きなのかしら?  ――あ。  鼻が、詰まってるんだ。  花粉症?  夏に?  聞いたことはあるけど……夏草の花粉症もあるって。  大変そうだなあ。  そう思いながら、私は小さな男の子の背丈に合わせるように屈み。  彼を、抱き締めました。 「おねえちゃん、くさい」  彼はそう言いました。 「うん、そうだね。くさいね」  私は、涙声になっていました。  なんで、泣いているのでしょう?  誰か、教えて。